安全対策委員会の見解としては、『安全基準:第36条 3)衣類の制限にある通り、羊毛製品および合成繊維製品の着用は禁止であり、帯電防止能のある木綿または同等以上の衣類、あるいは帯電防止加工を施した衣類を着用すること』が基本的な対応方針となります。
安全基準において、具体的な数値等の詳細な基準は明記しておらず、最終的な対応については、専門医および指示医のご判断のもと、各施設においてご検討いただきますようお願い致します。
第1種装置においては、点火源を絶対に持ち込まないことが最優先事項であり、静電気の発生を可能な限り排除する必要があります。治療時の衣類については、安全性を最優先にご判断ください。
患者の尊厳に配慮しつつ、安全性を確保するための対応として、以下に要点をまとめます。
- 代替品の提供
最も確実な対応は、治療前に綿100%(ゴム部分も含めて綿または天然素材)の下着を施設で準備し、患者に着替えていただく方法です。これは、患者の私物を制限するのではなく、安全性確保のための代替品を提供するという形をとることで、患者の尊厳に配慮した対応が可能となります。複数の清潔な代替品を用意し、患者が選択できるよう配慮することも有効です。
- ゴム部分の材質確認とリスク評価
ポリエステルと一口に言っても、その混紡率や織り方により帯電性が異なります。
可能であれば、該当する下着のゴム部分のポリエステル混紡率を確認し、非常に微量である場合や、ゴム部分が肌に直接触れる面積が広い場合などについて、リスクが許容範囲内かどうかを、専門医や指示医と相談の上ご判断ください。
高気圧酸素治療安全協会が推奨する導電性繊維を織り込んだ専用治療着を使用している場合は、下着の上からこの治療着を着用することで、さらに帯電性のリスクを低減できると考えられます。
- 施設としての明確な基準設定の重要性
「全体の何%まで合成繊維が含まれていれば不可とするか」といった数値的な基準は、安全基準では示されていません。しかし、各施設が安全性を確保するためには、次のような明確な内部基準を設けることを推奨します。
- 患者への衣類着用に関する明確な説明
治療前に、着用可能な衣類の材質について具体的に説明を行い、必要に応じて代替品を提供する旨を事前に周知します。
- リスク評価に基づいた許容範囲の設定
専門医、HBO装置の操作者、医療安全管理者などと協議のうえ、帯電性に関するエビデンスや過去の事例を踏まえて、合成繊維の最小限の含有率や許容される部位についての内部基準を策定します。
- 例外規定と対応手順の整備
基準を満たさない衣類を着用している患者への対応手順(例:代替品の提供、着替えの支援など)をあらかじめ整備し、スタッフ間で共有します。
最終的な判断は、貴施設の専門医および指示医の裁量に委ねられますが、上記のような具体的な対応策や内部基準を検討することにより、患者の安全と尊厳の両立を実現できる体制づくりが重要です。
【参考資料】
日本高気圧環境・潜水医学会/高気圧酸素治療安全協会:『高気圧酸素治療のQ&A特集 改訂版(平成5年~平成20年集)』2009年 VOL.18 No.2(通巻第35号)平成21年3月 p.16より
- 第1種装置内で出火した場合、いかなる物質も燃焼する可能性があります。
- 要は点火源を絶対に装置内に持ち込ませないことが重要です。
- 静電気防止のため、治療装置本体および患者自身を完全かつ確実に設置(アース)し、発生した静電気が蓄積されて着火のエネルギーとならないよう、これを完全に阻止することが必要です。